2023年はカナダの大麻マーケットにとっては市場の均衡点を模索する1年となりました。2022年後半から始まった大麻価格の下落は、2023年下半期からは反転し、販売価格が上昇傾向に転じています。また、大きな問題となっていた過剰在庫も減少傾向にあり、カナダの大麻市場にとって前向きな兆しと言うことができます。法改正や規制緩和が期待される2024年は、市場関係者の間で転換期と捉えられており、ロビーイングを含めた水面下での新たな動きも活発化してきています。
大麻ラウンジ
カナダ各地で大麻ラウンジのオープンが計画されています。大麻ラウンジとは、公共スペースで大麻を使用できるカフェなどのことを指します。法解釈の変更に伴い、現行の大麻法の範囲内での運営が可能となり、多くの大麻関連企業や個人投資家がこの新たなビジネスチャンスに関心を示しています。この事業を展開するには、複数のライセンス取得が必要であり、現在、志願者たちはライセンス取得に向けて手続きを進めています。カナダで大麻事業関連のライセンスを取得するには、申請から最低でも6ヶ月を要するため、これらの事業が実際に始動するまでには時間がかかる見込みです。しかし、元々別の目的でライセンスを取得していた企業の中には、この新しい分野への進出を決定しているところもあります。特に、アルバータ州では州独自の取り組みが進んでおり、2023年10月にはカンナビノイド成分を使用したレストランがエドモントンでオープンしています。
多くの州内でこの様な動きが見られる中、大麻で有名なブリティッシュ・コロンビア州においては、今のところ大麻ラウンジの運営を許可する動きは見られません。下記の表は、2023年に大麻ラウンジの是非についてブリティッシュ・コロンビア州で行われた国勢調査の結果です。ブリティッシュ・コロンビア州のビクトリア市では、ビクトリア・カンナビス・バイヤーズ・クラブがThe Boxという大麻ラウンジを非合法で運営していましたが、そちらも2023年3月に州の指導により閉業しています。これらの動きは、カナダにおける大麻市場の多様化を示しており、今後の展開が注目されています。
大麻を使ったイベントの開催
大麻関連のイベントも増加傾向にあり、2024年は従来とは異なるエンターテイメント性の高い大麻イベントがカナダ国内で数多く予定されています。カナダでの嗜好大麻の合法化は、決して大麻の使用を奨励するものではないため、若者を対象とした魅了的な宣伝やイベントは禁止されていましたが、社会の見方も徐々に変わりつつあり、規制も少しづつ緩和され始めています。
カナダでの大麻イベントとしてはLift ExpoやGrowUp Conferenceが有名ですが、そのような大手のイベント会社が手がけないようなイベントを企画する動きも見られ、そこにライセンスを持った企業が参加するという流れも一つの主流となってきています。私たちCJCもこの分野への参入を進めており、今月はトライアルとして招待制の大麻イベントを行います。これにはカナダの大麻企業も3社参加する事になっています。このイベントの結果については、後日SNS上で報告します。
オンタリオ州での法規制の変更
2024年、カナダ最大の大麻マーケットであり、国内全体の売上の40%を占めているオンタリオ州で、大麻の法規制に関する変更がいくつかあるました。変更点は大きく分けて以下の2つです。
- ディスペンサリーの上限の増加: 新しい法律により、ライセンスを持つディスペンサリー事業者は、最大150の店舗を運営できるようになります。これは、現在の75店舗という上限を大幅に引き上げるもので、大麻市場の拡大とアクセスの向上を目指しています。
- デイケアでの大麻栽培の禁止: デイケアとして使用されている家では、例え個人の自宅でも大麻栽培が禁止されます。これは、安全と健康を保護するためであり、子ども達に対する大麻の露出を抑制することを目的としています。これはBC州でも同様の法規制が適用されています。
これらの変更は、オンタリオ州における大麻市場の成長と発展を促進するとともに、公衆衛生と安全を確保するためのものです。大麻小売業者にとっては、新たなビジネスチャンスが生まれる一方で、家庭環境における大麻の取り扱いに関してはより厳格な対応が期待されています。
BC州での法規制の変更
ブリティッシュコロンビア州では、大麻生産者が、ディスペンサリーに製品サンプルを提供することが許可されました。この変更は業界からのフィードバックに応えて行われたもので、これにより、より幅広いマーケティングが可能になりました。この変更により、BC州で行われている大麻イベントでは、大麻製品のサンプルの配布が行われることも少なくありません。カナダではサスカチュワン州以外の全ての州において、州政府が仲買人として卸売を行っており、また、製造業者が営業のためにディスペンサリーにサンプルを提供することが法律により禁止されていたため、生産者は自社製品を販売するディスペンサリーから商品を買い取り、その買った商品をサンプルとしてそこで働く従業員に提供するというプロセスを踏むしかなかったのですが、これにより堂々とサンプルを提供することが可能になりました。サンプルを受け取った業者や従業員は、他の店舗や消費者にそのサンプルを提供することは法律で禁止されています。また、サンプルのサイズについては制限がないものの、合理的なサイズと数量が期待されており、小売に適さないほどのサイズであることが求められています。この変更の内容は、ブリティッシュコロンビア州のサイトで確認することができます。