ドイツ野党 次期選挙で大麻合法化の撤回を公約 – 政治的対立の深層

2025年2月23日に予定されているドイツの連邦議会選挙は、ドイツの政治に大きな影響を与える可能性が高まっています。現在首位に立つ野党のCDU/CSUは、勝利した場合、オラフ・ショルツ政権が今年初頭に導入した大麻合法化政策を完全に撤回すると宣言しており、国内で大きな論争を巻き起こしています。
CDUの健康政策報道官ティノ・ゾルゲは議会下院での討論で「我々は大麻を吸いたいのではなく、安全と秩序を求めている」と主張し、野党は大麻合法化を単なる薬物政策を超えた、社会の根幹を揺るがす危険な政策と述べました。また、シルケ・ラウネルト議員は「組織犯罪をドイツ国内に招いた招いた」「オランダの麻薬組織へのドアを開いた」と述べ、合法化が犯罪組織の温床となる危険性を強調しました。
最新の世論調査では、CDU/CSUが30%以上の支持率で首位に立っており、連邦議会での過半数獲得に向けて非常に有利な状況にあります。フリードリヒ・メルツ党首は「(ショルツ政権下の)この16週間は非常に問題が多い」と現政権を痛烈に批判し、政権交代への機運を高めています。
一方、ショルツ政権の大麻合法化政策は、主に若年層に向けた対応として導入されました。2021年の調査によると、ドイツの450万人の成人が過去12か月に大麻を使用しており、その多くは18–24歳の若者です。この事実は、政策撤回の難しさを物語っています。保健大臣カール・ラウターバッハは「既存の消費をより安全にすることが目的だ」と政策を擁護し、単純な禁止では問題の解決にならないと主張しています。
ショルツ政権は、大麻の栽培と消費を部分的に合法化し、乱用防止のための情報キャンペーンや未成年者保護対策、消費実態に関する学術的調査を実施しています。また、オランダ、カナダ、アメリカなどの先行事例を慎重に検証し、政策の効果を最大限に高める取り組みを行っています。
大麻合法化を巡る論争は、単なる薬物政策を超えた、ドイツ社会の根本的な価値観の対立を浮き彫りにしています。CDU/CSUは「安全と秩序」を、現ショルツ政権は「自由と柔軟性」を重視する姿勢を示しており、選挙後の政治的妥協と交渉が不可欠となることが予想されます。特に社会民主党との連立が想定される場合、大麻合法化の完全撤回は容易ではなく、最終的な政策の形は流動的となるでしょう。
フリードリヒ・メルツ党首は「分裂した政党は選挙に勝てない」と強調し、かつてのCDU/CSUの内部対立を克服して現在の結束を維持しています。この選挙は、ドイツの政治的・社会的未来を決定づける重要な分岐点であり、大麻合法化を巡る論争は、安全か自由か、秩序か柔軟性かという根本的な価値観の対決を反映しています。
450万人の大麻経験者を抱えるドイツにおいて、この政策は単なる政治的争点を超え、社会の在り方を問う重要な試金石となっています。政治アナリストたちは、この選挙が今後のドイツの方向性を大きく左右する歴史的な瞬間になると見ており、国民は今、重大な選択の前に立たされています。大麻合法化の是非は、ドイツ社会の未来像を映し出す鏡となっているのです。

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