医療大麻と嗜好大麻

大麻という植物が世界中を賑わせている。

もちろん各国それぞれ法律が違い、その取り扱い方も千差万別だ。

僕が住んでいるカナダでは2001年に医療大麻が、そして2018年には嗜好大麻が合法化された。

隣国アメリカも連邦政府での合法化には至ってないが、各州それぞれ独自の方針で大麻に向き合い、多くの州が合法化を実現している。

またそれに伴いFDA(アメリカ食品医薬品局)も忙しく対応に追われている。

日本にも当然その波は押し寄せて来ており、すでに大麻成分を含むてんかん薬エピディオレクスの治験も始まっている。

医療大麻に関する審議が国会で加速するのもそんな遠い未来ではないような感じもする。

また昨今のCBDブームは日本も例外ではなく次第に盛り上がりを見せている。

次々と海外で合法化されていく医療大麻に興味を持つ人も少しずつ増えだし、インターネット上では日本人による大麻に関する発言も増え続けている。

大麻はタバコ、アルコールに比べ体への害が少なく、健康管理にも有用であるというのが現在のグローバルスタンダードになりつつある。

しかし大麻取締法により長い間「ダメ、ゼッタイ」と教育されて来た日本人にとってはすんなりと大麻を受け入れる事は簡単ではないようだ。

その要因の1つになっているのが「医療大麻」と「嗜好大麻」という言葉の存在である。

大麻に対しての知識がない人がこの2つの単語を見た時に、大麻には嗜好用と医療用とがあるように捉える事が出来る。

それでは本当の所はどうなんだろうか?

実際に合法国で人々はどのように大麻と向き合い、そして「医療大麻」「嗜好大麻」という言葉をどの様に捉えているのかを考えてみたいと思う。

医療大麻とは?

2019年現在、北米をはじめ世界中において大麻は医療の分野で様々な形で使用されている。

エピディオレクスのようなFDA(アメリカ食品医薬品局)に認められた大麻成分を含む製剤もあれば、日本で売られている様な民間企業が大麻から成分を抽出して作ったCBDオイルなどもある。

不眠症や慢性披露、うつ、抗がん剤治療の吐き気止めなどには乾燥された大麻の花穂をそのまま使う人も多い。

また喉に問題があり喫煙をする事が難しい人や、花穂を砕いてジョイントを巻くなど手先の細かい作業が難しいパーキンソン病患者はエディブル(大麻クッキーなど食べる為に加工された物)にして使う人も多く見られる。

カナダでは医者の診断により大麻の使用が認められた人は、カナダ政府が指定するライセンスプロデューサーと呼ばれる会社の中から好きな会社を選んで大麻を購入する事が出来る。

各ライセンスプロデューサーはオイルを作っている所もあればそうでない所もあり、それぞれ別のオリジナル商品、品種を取り扱っている。

またライセンスプロデューサーから購入した医療大麻は税金控除の対象にもなる。

嗜好大麻とは?

それでは嗜好大麻はどうなんだろう?

嗜好大麻の生産は医療大麻と同じくライセンスプロデューサーが行っているのだが、医療大麻だけを作っている会社もあれば嗜好大麻、医療大麻の両方を作っている会社もある。

それらの嗜好大麻は「ディスペンサリー」と呼ばれる店で販売されている。

ディスペンサリーとは「処方箋薬局」という意味の言葉なのだが、最近は嗜好用でも医療用でも大麻販売店は全てディスペンサリーと呼ばれるようになってきている。

そこで購入した大麻はもちろん自分の好きな方法で使う事ができ、また他人とシェアする事も出来る。

ほとんどの人はジョイントを巻いたり、ボングやパイプで吸ったりとバッズをそのままの形で消費するが、喫煙に抵抗がある人はオイルを作ったりカンナバターを作ってエディブルを作る事も出来る。

医療大麻と嗜好大麻の違い

人々を混乱させている原因の一つである「医療大麻」と「嗜好大麻」との違いは何なんだろうか?

品種の選択

大麻は大きく分けるとサティバとインディカに分類されるという事は多くの人がご存知だと思う(ここではルデラリスは省略します)。

更にその中に沢山の品種がありそれぞれ違う効果があるのだが、その効果によって医療大麻を必要とする患者は自分に合った品種を自由に選択している。

嗜好大麻の場合も同じくディスペンサリーには沢山の品種の大麻が販売されており、利用者は自分好みのエフェクトが得られる品種の物を選んで購入することが出来る。

使い方

医療大麻の使い方は様々だ。

癌患者に使われるRSOはオイル状で経口摂取、最も簡単で素早くカンナビノイドを接種できる喫煙とベイプ、喫煙に問題があるがカンナビノイドを必要とする人に好まれるエディブル、乾癬など皮膚に疾患がある人が使う大麻成分を含む軟膏などがある。

喫煙は嗜好目的で使用する場合でも最も一般的な大麻の使い方だ。

シャターなどオイルは比較的新しく現れた文化で、バッズを燃やして吸うよりクリーンな事から嗜好目的でもベイプは人気がある。

また医療目的と同じ理由で、嗜好目的の場合も喫煙に問題がある人にエディブルが好まれており、大麻クッキーやTHCオイルの入ったカプセルなどその形態は様々である。

結論

合法国の大麻に関する記事を読んでいると、”A lot of people medically use recreational marijuana”という表現をよく目にする。

日本語にすれば「多くの人は嗜好大麻を医療目的で使っている」。

これは合法国に住む人々が、医療目的と嗜好目的で使う大麻は同じ物であると捉えているこ事を意味している。

人々は医療目的でも嗜好目的でも同じ大麻を使うのだが、制度上この2つの言葉が生まれたのだ。

まとめ

多くの大麻愛好家は大麻は政府によって管理されるべきではないと唱える。

実際にカナダでは大麻が管理されている事によって利権問題となっており、合法化に至るまでに尽力を尽くした人たちが恩恵を受けれないなどの状況になっている。

僕自身もビジネスマーケットは完全にオープンになるべきだと思っている。

しかし合法で販売されている嗜好大麻は価格も高いものが多く、全ての医療患者が経済的な余裕をもって使用できるという価格ではない。

また田舎に住んでいる人達など、誰もがディスペンサリーに気軽に行ったりパソコンで注文できるかと言うとそうでもないだろう。

多くの大麻製品は市場に出回る前に検査を受けてるが、やはりナチュラルな物なので個体差が出る。

嗜好大麻店で販売されている大麻は屋外で栽培された物もあり、アメリカではそれらから作られたオイルやエディブルも販売されている。

嗜好用として使うのであれば問題はないが、抗がん剤治療によって抵抗力が下がっている人などにとっては別の選択肢があった方がいいだろう。

昔から地球上に存在し世界中の人々によって医療、嗜好の両方を目的として利用されてきた大麻という植物。

しかし時代が変わり人々の生き方も昔とは違ってしまった現代において、医療大麻と嗜好大麻というシステムは区別して運用していく必要があるのではないかと思う。