カナダでは嗜好目的での大麻が合法化されて約5年が経過し、「ファームゲート」と呼ばれる流通/販売の方法に注目が集まり始めています。
「ファームゲート」は、生産者が農産物を農場や生産現場で直接販売する事を指します。ワイナリーが来場者にワインを直接販売するのと同様に、許可を持つ大麻生産者が自分たちの製品を直接消費者に販売することが許可される仕組みです。
オンタリオ州のファームゲート
オンタリオ州はファームゲートを許可した最初の州であり、現在、ライセンスを取得した複数の生産者が、オンタリオ州の農園で自社製品を販売するためのライセンスを取得するために、様々な段階を踏んでいる様です。
大麻を販売するファームゲートプログラムは、ワインを作るブドウ園に非常によく似ています。
顧客は農園や製造施設に隣接する店舗で、直接生産者から大麻製品を購入できる様になります。
ファームゲートモデルは、認可を受けた生産者にとって、地域社会に雇用を創出し、収入を増やし、消費者に生産過程や高品質な製品を作るための作業工程について教育する絶好の機会です。またそれはブランディングを行うための機会であるとも言えます。
オンタリオ州の大麻小売を規制するオンタリオ州アルコール・賭博委員会(AGCO)によると、ファームゲート販売のための小売事業者ライセンスの申請を14件受理し、そのうち、以下の6社に認可がおりました。
- Tweed
- Thrive Cannabis
- Dykstra Greenhouses
- Medz Cannabis Inc
- Muskoka Grown Ltd.
- Level Up Infusions
Thrive Cannabisは、オンタリオ州のジャービスにある屋内外生産地に小売店を併設し、同州、またカナダ全土で初の農園直売店となることを発表しました。Thrive Cannabisは、オンタリオ州で合法的な大麻店舗をオープンするために必要なAGCO発行の小売店舗認可(RSA)を取得し、2021年4月23日より店舗をオープンしています。
オンタリオ州でのファームゲートに必要なライセンスと認可
ディスペンサリーを開業し、嗜好用大麻を販売するためには、オンタリオ州アルコール賭博委員会(AGCO)から2つのライセンスと認可を取得する必要があります。
・小売事業者ライセンス(Retail Operator Licence)
:
小売事業者ライセンス(ROL)は、最初に申請する必要があるライセンスです。このライセンスは、個人/個人事業主、パートナーシップ、または法人として申請することができます。ROLは、あなたがカナダの大麻取締法とそれら規則に定められた資格基準を満たしている事
の確認が行われます。AGCOのライセンスの料金は6,000カナダドルです。
この手数料は、ライセンス申請書の提出時に支払う必要があり、通常払い戻しはされません。
一般的に、ライセンスの申請には、警察調査や身元調査が含まれ、必要に応じて申請者、申請者に関係する人物(プロジェクトに関わる第三者など)に対しても実施されます。これらのライセンス発行の適格性を判断する審査は、手続きに通常は数ヶ月かかります。
必要に応じて、州の担当官から追加情報を求められることもあります。
必要な情報がすべて提供され、申請書がデューデリジェンスチェックに合格すると、小売事業者ライセンスが発行されます。このライセンスには、ライセンス番号、有効期限、ライセンスに関する条件(企業構造や資金源に変更があった場合、5営業日以内にAGCOに通知する義務など)が記載されます。
小売店経営者は、認可されたディスペンサリーで販売するための大麻製品の仕入れを開始するために、オンタリオ州大麻ストア(OCS)と卸売供給契約を締結する必要があります。
AGCOから小売事業者ライセンス(ROL)が発行されると、AGCOはあなたの連絡先をオンタリオ州大麻ストア(OCS)と共有し、卸売供給契約を開始できるようにします。
小売店舗許可を申請するために、小売事業者ライセンス(ROL)の発行を待つ必要はありません。小売事業者ライセンス(ROL)申請書の提出後、小売店舗予定地(ファームゲートの場合、大麻生産地に位置することになる)は、小売店舗認可を得る必要があり、店舗が規制と基準に記載された場所、レイアウト、セキュリティ、その他の要件を満たしている事の確認も行われます。
・小売店舗認可(Retail Store Authorization):
小売店舗認可 (RSA)を申請するには、すでにAGCOに小売事業者ライセンス (ROL) を申請している必要があります(すでに小売事業者ライセンスが発行されている場合は、有効なROLを保有している必要があります)。小売店舗認可 (RSA)と小売事業者ライセンス (ROL)の両方を同時に申請することも可能ですが、小売店舗認可 (RSA)が交付される前に小売事業者ライセンス (ROL)が交付されます。AGCOの小売店認可 (RSA) の手数料は4,000カナダドルです。
この手数料は申請書提出時に支払う必要があり、通常払い戻しはされません。
小売店舗認可を受けるためには、ディスペンサリーの出店に関し、以下の基準を満たす必要があります:
- 小売業者免許を申請済み、または保持していること
- ディスペンサリーの建設予定地が、学校または私立学校の敷地境界線から150メートル以上離れていること
- 店舗が設置される自治体に連絡し、予定するディスペンサリーが小売店舗設置に関する自治体の要件を満たしていること
- 店舗に関する要件を理解していること
- ディスペンサリーの営業名が、広告・宣伝に関連するすべての該当連邦/州法に準拠していること
オンタリオ州におけるファームゲートの場合、認可を受けた事業者(またはその関連会社)は、単一の小売店舗認可 (RSA)を申請する必要があります。
この場合、予定されるディスペンサリーは、連邦政府が発行した生産ライセンスに定められた敷地内に立地する必要があります。小売事業者ライセンス (ROL)と小売店舗認可 (RSA)を提出した後、大麻小売管理者ライセンス (Cannabis Retail Manager License)の申請に移ることが可能になります。
・小売管理者ライセンス (Cannabis Retail Manager License):
オンタリオ州のすべてのディスペンサリーは、ライセンスを持った販売マネージャーを配置する必要があります。販売マネージャーは、以下のような業務を行う責任があります
- 店舗の従業員を監督、管理、または雇用すること
- 大麻製品の販売管理
- 大麻販売に関するコンプライアンスの管理
- 店舗のために大麻製品んの仕入れを行うこと
- 店舗のために契約を締結すること
この要件の唯一の例外は、ディスペンサリーが個人事業主であるか、2人以上の個人が共同でパートナーシップを組んでいる場合です。そして、小売業者が特定の店舗で店長の職務を兼任している場合、小売管理者ライセンスは必要ありません。小売管理者ライセンスの料金は750カナダドルです。この料金は申請書提出時に支払わなければならず、通常は払い戻しは行われません。
次のステップは?
小売事業者ライセンス(ROL)と小売店舗認可 (RSA)が提出された後、次のステップは自治体への告知プロセスとオンタリオ州の大麻小売を規制するオンタリオ州アルコール・賭博委員会(AGCO)による店舗検査です。店舗が営業を開始する前に、店舗は2回に分けてAGCOコンプライアンス・オフィサーによる検査を受け、すべての適格性と店舗固有の要件が満たされていることを確認する必要があります。
1回目の検査は、小売店舗事前認可検査と呼ばれ、小売店舗認可が発行される前に実施されます。2回目の検査は開店前検査で、開店前に実施されます。
小売店舗認可(RSA)の申請書が提出されると、AGCOから連絡があり、15日に渡る公示期間の日程が通知されます。AGCOの担当者は、農園の店舗正面に目に見えるように掲示するための公示プラカードを電子メールで送付します。
プラカードが掲示され次第、店舗が検査を受ける準備ができたと判断され、検査を予定することができるようになります。小売店事前承認検査に合格後は、小売店舗認可(RSA)発行のための待ちに入ります。
小売店舗認可(RSA)が発行されると、認可を受けた業者が店舗を一般に公開する前に遵守しなければならない一定の条件が含まれる場合があります。その後、開店前検査に合格することで、実際の開店が許可されます。コンプライアンスの担当官は、大麻ライセンスおよび法律規制への準拠を確認するため、いつでも店舗を訪問することが可能であることに留意する必要があります。以下は、店舗を営業する際に守らなければならない実際のルールです。
やるべきこと:
- 小売店舗認可(RSA)を取得してから1年以内に、認可された店舗で大麻の販売を開始し、大麻の販売を継続すること
- 許可された時間帯(曜日を問わず午前9時から午後11時)のみ営業すること
- 合法の大麻小売店であることを証明する行為式のシールを掲示すること。シールは、店舗入り口の外から容易に見える場所に貼らなければならず、幅17cm以上、長さ20cm以上でなければない。シールはフランス語版、英語版、またはその両方を掲示することが可能
- 小売店舗許可(RSA)が取り消された場合、または更新されなかった場合は、速やかにシールを剥がすこと
- 小売店舗販売許可証を店内の見やすい場所に掲示すること
- カナダの大麻取締法に基づき、商業目的で大麻製品を製造するライセンスを所有する者によって製造された製品のみを販売すること。個人小売業者は、オンタリオ州大麻ストア(OCS)からしか大麻製品を仕入れることができない
- 特定の情報と活動の記録を保持すること
- 大麻製品が違法市場や違法行為に転用されるリスクを低減するための対策を講じること
- すべての販売を記録管理すること
- 大麻の責任ある使用に関する情報を利用者に提供する
- 雇用プロセスの一環として、従業員から犯罪経歴証明書を取得する
- 店舗で働くすべてのマネージャーおよびその他の従業員が、店舗での勤務初日前に、必要な理事会承認のトレーニングプログラム(CannSell)を修了していることを確認すること
- 25歳未満に見える人物には身分証明書の提示を求め、入店を許可する前にその人物が少なくとも19歳であることを確認する
- 大麻製品やアクセサリーが、店の外から見えないように陳列すること
やってはいけないこと:
- 19歳未満の者に大麻または大麻アクセサリーを販売すること
- 身分証明書の提示を求め、その人物が19歳以上であることを確認せず、25歳未満に見える人物に入店を許可すること
- アルコールや大麻の影響下にある、またはそのように見える人に大麻製品を販売すること
- 1回の来店で、30グラム以上の乾燥大麻(またはそれに相当する他の種類の大麻)を販売すること
- 19歳未満の者を雇用すること
- セルフサービス、または自動販売機により大麻または大麻付属品を販売すること
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