カナダ、サスカチュワン州で大麻のうどんこ病に対する研究プロジェクト

カナダのサスカチュワン州にある工科大学Saskatchewan Polytechnicと大麻の種苗事業を行うMother Labsが協力し、大麻産業の重要な課題である「うどんこ病」への抵抗性を高めるための研究プロジェクトが進行中です。この共同研究は、大麻栽培の持続可能性と製品の品質向上に対する重要なステップになると考えられており、大麻産業の発展において新たなマイルストーンを築く可能性があります。

プロジェクトの核心にあるのは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)技術の応用です。PCR技術は、特定のDNAシーケンスを増幅し検出するために用いられる方法で、医学研究や法医学だけでなく、植物育種の分野でも広く利用されています。COVID-19パンデミック期間中に広く用いられたPCRテストと同じ基本原理を用いていますが、本プロジェクトでは大麻の「うどんこ病」に対する抵抗性遺伝子の有無を検出するために特化しています。この技術の応用により、研究チームは「うどんこ病」に強い大麻株の選別と育成を目指しています。

Saskatchewan PolytechnicとMother Labsの研究に参加している学生たちは、実際に植物からDNAを抽出し、PCRテストを通じて性別の特定や「うどんこ病」に対する抵抗性の有無を調査しています。この実践的な経験は、学生たちにとって、将来の問題解決に応用する貴重な機会となると¥考えられます。また、このプロジェクトは、学生たちにとって、大麻産業における研究開発の最前線で活動する経験を積むことができる絶好の機会でもあります。

「うどんこ病」は、湿度が高い環境での大麻栽培においては頻繁に見られる問題であり、「うどんこ病」に抵抗性のある株の開発は、被害を最小限に抑える上で必要不可欠です。Saskatchewan PolytechnicとMother Labsの共同研究は、大麻産業における品質向上と持続可能性という部分において期待されています。このプロジェクトは、大麻栽培技術の進化に重要であると同時に、大麻産業全体のイメージの向上にも寄与する可能性が期待されています。

このプロジェクトは、カナダ国立研究評議会工業研究支援プログラム(NRC-IRAP)からの資金提供を受けており、Saskatchewan Polytechnicは2023年にヘルスカナダ(カナダ保健省)から大麻研究および分析を行うためのライセンス(リサーチライセンス)を取得しています。

Saskatchewan Polytechnicの応用研究副学長であるSusan Blum博士は、大麻産業の成長に伴い、優れた育種プログラムと省エネルギーによる繁殖方法の開発がますます重要になると指摘しています。このプロジェクトは、伝統的な農業技術を大麻産業に適応させ、大麻の品質を向上させることを目的としています。

カナダではこのプロジェクト以外にも、「うどんこ病」に対する抵抗性を持つ大麻の開発に向けた研究が進められています。2020年、ブリティッシュコロンビア大学(UBC)では、「うどんこ病」などの病害抵抗性に焦点を当てた大麻の品種改良の研究を支援するため、連邦政府、州、大麻産業界から420万ドル以上の資金援助がを受けることが発表されました。これらの研究は、大麻産業の持続可能性と品質向上に貢献することが期待されています。このプロジェクトは、UBCの研究者であるローレン・リーセバーグ博士とマルコ・トデスコ博士とオーロラ・カンナビス社との共同研究であり、オーロラ・カンナビス社は、このプログラムによって発見された「うどんこ病」抵抗性に関してすでに仮特許を出願しています。研究は「うどんこ病」への対応だけにとどまらず、2023年には、UBCのトデスコ博士もオーロラ・カンナビス社の遺伝学者とチームを組み、高品質な大麻を屋外生産に適応させる研究も行うと発表しています。

日本でも医療用大麻(大麻製剤)の合法化に向けた動きが進んでいます。カナダでのこういった研究は、将来的に日本の大麻産業にも影響を与える可能性があります。海外の大麻産業に携わりたいと考えている方々にとって、これら大学機関で学びこのような経験を得ることは、将来仕事に就くうえでも貴重な体験となります。大麻産業は急速に進化しています。これらの進歩を追いかけ、学び、理解することが、将来の大麻産業で成功するための鍵となります。