ドイツは、成人向けの嗜好目的の大麻の合法化を承認し、マルタとルクセンブルクに次いで、ヨーロッパでこのような措置を講じた3番目の国となりました。この新しい法律は、成人が個人使用のために少量の大麻を所持することを許可し、また、非営利の「大麻クラブ」で大麻を栽培し、購入することも可能になります。しかし、この法律は、成人向け製品の流通と小売販売のための枠組みの実装という点では不十分であり、「準合法化」との見方が多く、カナダの様な完全な合法化にはさらなる進展が必要です。
大麻クラブとは
ドイツの大麻合法化における「大麻クラブ」は、非営利団体であり、大麻の栽培や配布を管理する組織です。以下が、大麻クラブに関する詳細です。
- 目的: 大麻クラブは、大麻の品質管理や安全性の確保を目的として設立されます。また、大麻のの流通を管理し、闇市場の取り締まりや薬物関連犯罪の抑止を図ることも重要な目的とされています。
- 構成: 大麻クラブは非営利団体であり、会員制です。大麻を購入・栽培するためには、この非営利団体に所属する必要があります。
- 運営: 大麻クラブは会員数に制限があり、一般的に最大で500名までの会員を受け入れます。会員は18歳以上である必要があり、複数のクラブの会員になることはできません。
- 販売: 大麻クラブでは大麻を販売しますが、販売される大麻には使用を思いとどまらせる警告文章が含まれている必要があります(日本のタバコの様な措置)。また、アルコール製品の販売は禁止されます。
- 管理: 大麻クラブは定期的な監査を受け、会計報告を提出する義務があります。すべての収益はクラブまたは給与に再投資される必要があります。
- 税金: 現在の段階では課税対象外ですが、将来的に大麻の販売に特別消費税を適用する可能性が検討されています。
- 罰則: 大麻クラブ内での違反行為が発覚した場合、ライセンス取り消しや没収などの制裁措置が取られる可能性があります。
多くの反対意見
- 欧州委員会からの反対: ドイツの合法化の動きは、欧州委員会から多くの反対意見が出されました。欧州連合(EU)の法律や国際条約において、大麻の嗜好目的の使用は一般的に禁止されているため、ドイツの法案はこれらの規制と矛盾する可能性があります。
- 国内からの反対: 医師や司法団体から根強い反対がありました。医師会は大麻の依存性や若年層の常用による脳への影響を警告しており、また、裁判官と検察官は法案に反対しています。これらの反対に対して、ドイツ政府は闇市場の取り締まりと若者の保護を目的として法案を推進し、流通を管理する方向に転換することで、反対意見に対処しています。
今回の合法化の概要
ドイツ政府は当初、大麻の完全な合法化を目指していましたが、欧州委員会からの強い反対が出ていることから、二段階の合法化アプローチを進めることとなりました。
第一フェーズでは、公共の場で最大25グラム、自宅で最大50グラムの所持、自宅で最大3株の栽培、社会クラブでの共同栽培が許可される予定です。フェーズ1の目的は、ドイツにおける大麻のブラックマーケットを縮小し、薬物関連犯罪を減らすことにあります。
第二フェーズでは、商業的なサプライチェーンを構築するためのパイロットプロジェクトに焦点を当てる事が予想されています。ドイツ政府は、成人向け市場全体を合法化することを最終的な目標としており、さらにはヨーロッパレベルでの進展を望んでいます。この段階で、合法化された地域での大麻販売に対する特別消費税の導入が検討されています5。他の国々の例を見ると、合法化により大麻市場からの税収が増加していることが報告されています
ドイツでは18〜25歳の成人のうち、少なくとも一度は大麻を使ったことがある人の割合が2021年には25%と、10年前からほぼ倍増しています1。しかし、法案には医師や司法団体からの根強い反対があり、大麻の依存性や若年層の常用による脳への影響を警告する声も上がっています3。国連の麻薬監視機関は、大麻の娯楽目的の使用を合法化する動きによって消費が拡大し、健康問題を引き起こしていると指摘しています。
ドイツの大麻合法化の動きは、薬物政策における新たな時代の始まりを示しており、ヨーロッパ諸国の反対との対話を続けながら、自国内での改革を進めています。大麻使用の安全性と公衆衛生を重視した政策を目指し、ヨーロッパ全体での大麻政策に影響を与えると予想されています。他の国々もドイツの例に倣い、大麻合法化に向けた措置を検討する可能性がありますが、各国の政策や法律、EUヨーロッパ連合の規制によって異なる形で進むことが考えられます。ドイツの経験は、他の国々が自国の大麻政策を再考する際の参考となる可能性があります。